マーケットで見る世界情勢(2017.5.11)
先日のフランス大統領選挙ではマクロン氏が極右政党のルペン氏を破り勝利しましたね。
また世論調査を覆しブレグジットやトランプ旋風のようなことが起こるのか?と思っていたのですが、そうはなりませんでした。
これでひとまず「マーケットにとって最も危ないイベント」だと言われていたフランス大統領選挙がマーケット的には無事に済んだということになります。
前回のこの記事では、北朝鮮情勢をマーケットデータで読み解くというテーマでご紹介しましたが、今回のフランス大統領選挙はどうだったのか?を見ていきたいと思います。
まずは恐怖指数から見ていきます。
(参照:StockBrain)
青線がいわゆる恐怖指数で緑線が欧州恐怖指数となっています。
欧州恐怖指数の方はフランス大統領選挙第1回投票前の4月18日と21日に 25.59と25.09と、厳重注意の24を超えています。
※ちなみに見方としては
・安全圏:~16
・やや注意:16~24
・厳重注意:24~
となっています。
ですが第1回投票が終わりマクロン氏とルペン氏の一騎打ちとなってからはマクロン氏の大統領就任の可能性が高まり、かなり落ち着きを見せていますね。
しかし、一歩間違えるとマーケットに大きなショックを与える要因にはなっていたであろうことはこの恐怖指数から見ても判断できます。
では安全資産であるゴールドの取引はどうだったのでしょうか?
World Gold Councilを見ていきましょう。ここには2017年第1四半期のゴールド需要がどうたったのかが5月4日に発表されました。
Gold Demand Trends Q1 2017
http://www.gold.org/supply-and-demand/gold-demand-trends/back-issues/gold-demand-trends-q1-2017
このグラフはゴールドETFが世界各地でどれだけ購入されたのか?を示していますが、今年の第1四半期で飛び抜けて多いのがドイツとイギリスであることが分かります。
ゴールド投資はリスク対策と強くリンクしているので如何にドイツとイギリスの投資家が将来に対して危機意識が高かったのかが伺えます。ドイツの投資家にとっては特にフランスで極右政党の勝利→EU解体の危機→ギリシャデフォルト→ドイツ銀行が大ピンチ、、、というシナリオが現実にあり得たので、このような動きになったのだと思えます。(ドイツはギリシャにとって最大の債権者で未払いのローンが960億ドルもある)
じゃあなぜイギリスの投資家もゴールドを大量に購入したのか?
恐らく昨年のブレグジットでEUからの脱退がどれだけ高くつくのか分かって来たからでしょう。EUはまだブレグジットに関する真剣な交渉が始まる前にイギリスに対し1,100億ドルを支払えと要求している(この金額の高さはほとんどのイギリス人がブレグジット投票の前には思いもしなかったらしい、、)ので、それだけイギリス人投資家の間で危機意識が高まっているからこのような動きが出ているのだと思えます。
今はフランスの大統領がマクロン氏に決まったということでマーケットがかなりホッとした動きを見せていますが、投資銀行出身で公職未経験の同氏が今のような政治的不透明感くすぶる時期にしっかりと大統領職が務まるのか?イタリアやギリシャが今後どうなるのか?といった不安定要素はまだまだ残っているので、まだ中長期的に見て安心したと言うべきではないでしょう。